建設業におけるJVとは?メリットやデメリット、会計処理を効率化する方法を解説!

建設業界にいる方は、JVという言葉を一度は聞いたことがあるでしょう。しかし、JVとは何か、どのようなメリット・デメリットがあるかを説明できるほど知識がない方も多いかもしれません。そこで今回は、JVについて詳しく解説します。

JVとは?

JVとはJoint Ventureのことで、日本語では共同企業体と訳されます。国土交通省の定義は、以下の通りです。

共同企業体(ジョイント・ベンチャー、JV)とは、建設企業が単独で受注及び施工を行う通常の場合とは異なり、複数の建設企業が、一つの建設工事を受注、施工することを目的として形成する事業組織体のことを言います。

引用:国土交通省「共同企業体制度(JV)」

JVは、目的によって4種類に分類され、施工方式によって2つに区分されます。

JVの4分類

特定建設工事共同企業体(特定JV)

特定JVは、大規模で難易度の高い工事のために作られる共同体です。一社ではなく複数の企業が集結することで、それぞれの強みを活かし技術力を駆使して施工にあたることが目的となります。
特定の工事の施工を目的としているため、工事が終われば解散します。また、どんな工事でも特定JVを結成できるわけではなく規模や技術面で必要があると認められた工事に限り、対象工事の種類や構成員数などは明確な基準に基づかなくてはなりません。

経常建設共同企業体(経常JV)

経常JVは、中規模・小規模の建設業者によって作られる共同体です。一社では施工が難しい工事も、複数で担当することで対応することができます。競争入札の参加資格を申請する際、複数で共同企業体を結成し、資格認定及び業者登録を受けることで作られます。
特定JVと異なり、一つの工事ごとに結成・解散するのではなく、中長期的な協業関係を構築することが特徴です。また、一社では取り扱えなかったような工事を経常JVによって達成できた場合、より上位の工事の機会が積極的にもたらされることになっています。

地域維持型建設共同企業体(地域維持型JV)

地域維持型JVは、地域の維持管理のため必要不可欠だと判断された工事に対して、その地域で事業を営む建設業者が結集して作られる共同体です。個人や一企業の発注する工事ではなく、公共施設や自治体の保有する土地などの工事が対象となります。
構成員として、10社までという制限が設けられています。10社のうち、1社は総合的な企画や調整を行うポジションを務めなくてはなりません。また、工事を行う地域について詳しく、地形や地質を理解して迅速に現場で施行できる企業に限ります。

復旧・復興建設工事共同企業体(復旧・復興JV)

復旧・復興JVは、災害発生時に地元の建設業者によって結成される共同体です。本来は地元企業が入札していた工事に対して、被災地域外の企業もJVに加入し、連携して工事を行います。復旧・復興JVにより、より素早く復興することと、地域雇用を守ることの両面のバランスをとることができます。
具体例として、令和6年能登半島地震においては、「令和6年4月1日以降に公告する案件であること」「令和6年能登半島地震に係る災害復旧工事であること」「工事場所が奥能登土木総合事務所管内であること」「予定価格が原則1億円以上3億円未満であること」「特定建設工事共同企業体のみを対象とする工事でないこと」を条件として復旧・復興JVの結成が認められています。

JVの2区分

共同施工方式(甲型JV)

甲型JVは、構成員があらかじめ出資割合を決め、それに応じて資金や人員を投入する方法です。出資の時期はJVで策定した資金計画をベースに、工事進捗と照らし合わせて決まります。損益計算もJV単位で計算し、各構成員への帰属は出資比率に応じます。

分担施工方式(乙型JV)

乙型JVは、施工内容を整理して各構成員がどんな工事を担当するか分担を決めて行う方法です。分離・分割発注との違いは、施工は分担するものの工事全体の責任はお互いに追うこととなる点です。損益計算は自社の分担ごとに行うため、合同計算はしません。

JVの詳細については、「煩雑化しやすいJVの会計処理!素早く的確に処理するコツは?」もあわせてご覧ください。

JVの会計処理方法は?

複数の企業が参加するJVは、会計処理が複雑になります。ここでは、スポンサー会社とサブ会社について、さらに会計処理の方式について解説します。

スポンサー会社とサブ会社

JVにおいて、出資比率が最も高い企業をスポンサー会社、それ以外の企業をサブ会社と呼びます。法律上は対等な立場となっていますが、スポンサー会社は見積もりを取り入札金額を決める権利を持っており、受注契約を結んだり協力会社に発注したりといった業務を行います。

取り込み方式と独立方式

JVには、取り込み方式と独立方式の2種類の会計方法があります。

取り込み方式とは、スポンサーの会計にJVの会計処理を取り込み、後から出資比率に応じて修正を加える方法です。また、取り込み方式には2つやり方があります。
「逐次持分把握法」はJVに参加している企業が取引する度、出資比率部分と他の企業の出資比率の部分を区分します。「決算時持分把握法」は、都度会計処理をするのではなく、まずJV全体の処理を行い、JV決算や各企業の決算のタイミングで出資比率に応じ修正する方法です。

独立方式は、JVの会計処理とそれぞれの企業の会計処理を別で行います。JV独自の会計処理を企業が別で行う点が、取り込み方式と異なります。

JVのメリットとは?

JVには様々なメリットがあります。今回は、特に4つのポイントを解説します。

受注機会の拡大

小規模事業者や中堅企業にとって、大型案件への参加はハードルが高いものです。技術力はもちろん、大きな工事に対応するだけの人材や機材の確保、資金調達など、様々な課題があります。しかしJVに参加することで、一社ですべてをまかなう必要がなくなります。複雑な技術や特定の分野に対するノウハウなどが手薄でも、受注できます。これにより、今まで接点のなかった市場への参入ができるようになる点もメリットです。

また、地域維持型JVに参加することで、地元の案件を受注するチャンスが増えます。まだ実績が少ない企業でも地元であるということから案件を獲りやすく、これをきっかけに地域の業者とのつながりができることも珍しくありません。地域貢献や社会貢献につながることからも、メリットを享受できます。

さらに、特定JVへの参加を通じて自社にはない技術を補完することができます。会社として新しい実績ができるだけでなく、従業員の技術力向上にも寄与するでしょう。

リスクの分散

大型案件への参加には一定の資金力が必要ですが、JVに参加することで共同出資となり、金銭面でのハードルをクリアできます。負担を軽減して大型案件に携われるようになり、リスクを小さくして大きな実績を作れます。

技術的なリスクの分散にもつながり、自社ではカバーしきれない施工も、他社と協力することでより多様な案件に参加できるようになります。複数の企業が技術力を共有するため、より短い時間での施工やよりハイレベルな施工が可能です。

工期遅延や損失リスクの回避にもつながります。すべての施工を一社でまかなうと、その企業に何かあった場合に工期遅延に直結します。しかし複数の企業が参加することで、このリスクを低減することが可能です。また、複数社が責任を共有することで損失リスクをおさえることができるでしょう。

経営資源の有効活用

JVはいくつもの企業がそれぞれ人材や機材を共有するため、各々の資源を有効活用できます。最近は建設業界での人材不足が深刻化していますが、こういったデメリットをカバーすることが可能です。また、他社の持つノウハウを知ることで技術力が向上し、自社の経営力アップにもつながります。新しい技術を知ることでイノベーションの創出にも寄与するでしょう。

コスト削減の面からもメリットがあり、共同調達や共同施工をすることで、スケールメリットが生まれ一社ですべてをまかなうよりも効率的に資金を使うことができます。

その他にも、JVならではのメリットはいくつかあります。例えば大手企業と一緒に参加することで、自社の企業価値が向上し、ブランディングにつながります。信用力が増すため、その後の案件獲得に有利に働きます。また、JVに一緒に参加した企業とのつながりが生まれることで、人脈を築け情報収集ができるでしょう。

JVのデメリットとは?

JVには多くのメリットがありますが、同時にデメリットもあります。以下の点には注意しましょう。

意思決定の複雑化

小規模事業者や中堅企業では、経営者一人の判断で物事が進んだり、決定プロセスに時間がかからなかったりというメリットがあります。しかしJVに参加すると多くの企業と足並みをそろえるため、意思決定が複雑化します。一つの工事を進めるのにも調整や工商が必要となり、スピード感は落ちます。また、これまで他社と連携した経験がない企業では大きな労力もかかるでしょう。

利益配分の不公平

JVでスポンサー企業となるのは1社で、残りはすべてサブ企業になります。スポンサー企業は、発注者と直接交渉したり共同財産を管理したりといった権利を持ちます。実行予算書の作成なども担当し、JVの実権をにぎることになるでしょう。どんな下請け業者を使うか、どの資材納入業者から仕入れるかといった決定権を持つのも、スポンサー企業です。

このようにスポンサー企業には多くの権限が与えられており、彼らが自社に有益な判断をすることで、サブ企業は不利益を被るケースも珍しくありません。

企業文化による摩擦

人数の少ない建設業者では、その企業ならではの文化を持つこともあります。しかしJVに参加する場合は他社と連携することが必須となるため、自社の習慣と他社との調整にギャップが生まれることもあるでしょう。コミュニケーション能力が不足していれば、そこからトラブルが起こるリスクもあります。

JVに対応したシステムの導入で、JVの会計処理の効率化を

JVは小規模事業者や中堅企業にとって、本来は参加できない大型案件を経験する大きなチャンスです。新しい技術を習得したり他社との人脈が生まれたりと、その後の経営に大きく寄与します。一方でいくつかのデメリットもあるため、注意は必要です。

また、会計処理も複雑になります。通常とは違う手順が発生するため、ミスが起きやすいでしょう。JVの会計処理にかかる時間を削減しミスを抑えるためには、JV会計に対応したシステムの導入が必要不可欠です。「e2-movE 工事管理」では、JV共同企業体の管理に対応可能です。

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