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もえなおさん「歴戦の勇者G4」

私にとってMACとは「体の一部」である。そして自分仕様にできる職人の「道具」でもある。


私は印刷業界でDTPと呼ばれる、印刷データをMACで作る仕事をしている。最初に配属されたときに渡されたマシンは、PM8500というマシンだった。当時はパソコンを触れると聞いて、飛んで喜んだものだ。しかし実態は、「データが動かない」「マシンがよく固まる」「とにかく処理に時間がかかる」という、文字通りの「じゃじゃ馬」だった。


今では考えられないが、写真データをほんの少し傾きを変えるだけで半日はかかる。保存だけで数十分はざらだ。保存ができる寸前で固まったなどというときは、マシンを叩き壊してやろうかと思ってしまった。黎明期のDTPを知っている人はわかると思うが「本当にこんな鉄屑で仕事ができるのか」と真剣に考えたものだ。


クラッシュは本当に多かった。今のマシンを使っていると「なんであんなに固まったのだろう」と思ってしまう。そしてハードエラーに加えて、ソフトの不具合によるエラーが頻発した。「機能拡張のあれとあれ」の相性が悪かったり、ソフトの初期設定が悪さしたり、本当にMACに関して、日々、研究と努力の積み重ねで仕事をしていたと思う。


おかげで、パソコンに対する探究心と辛抱強さは身に付いた。大抵の人なら投げ出す場面でも、こつこつと事例を積み重ねて、エラーの原因を見つけることには自信がある。また「自分のマシンは自分で守る」という姿勢を教えてくれたのは、かつてのじゃじゃ馬MACだった。この動かないMACを相手にしていた頃は、コンピュータに関して真剣に勉強したと思う。


おかげで、自分のマシンに対するプライドは人一倍身についた。もはやコンピュータといいうより体の一部だ。プロ野球選手が学生の頃から使用してきたグローブに似ている。つまり自分が完璧にセットアップしたため、代わりもないし、他のマシンなど触るのも気持ちが悪い。一方で自分のマシンを他人に触られると激怒してしまう。これは分かる人には分かってくれると思う。


今考えれば、昔のMACは本当に扱いづらかったが、人を選んで育てるという面では優秀だった。私は「パーソナル・コンピュータ」と呼んでいいのは、PM8500から数えてG4までのマシンだけなのではと思う。使われているというより、使っている感があるからだ。


その後MACを数台使用したが、個人的に最も名機だと思うのが、G4だと思う。速さと作業効率は現在でも十分通用するし、ほどほどにクラッシュしてくれるので、勉強にも丁度良い。仕事と人、そしてコンピュータという距離感が絶妙なマシンだと思う。


G4を使い始めて感動したのが「クラッシュが少なくなったな」という点だ。相変わらず機能拡張やコントロールパネルの相性の悪さの立ち上がりの悪さはあったが、以前のマシンとは比較にならない。ただ意味不明なエラーは極端に少なくなったため、ひねくれ者の私には少々寂しく思ったものだ。


実際G4で作業した仕事と期間が、個人的は最も多かった。しだいに私の周りではG5の利用者が現れ始めたが、全く意に介さなかった。興味がわかなかったのだ。


とは言うものの、仕事で使うからには進歩がなくてはならない。


結局私の部署にもMAC PROが導入されて使用することになった。速く、固まりにくく、誰でも扱いやすいこのMACを、私はMACとして受け入れることに少々抵抗感があった。確かに作業効率は格段に上がったが、職人の道具としてどうなのよ、と考えてしまう。つまり自分で手入れをして、隅ずみまでカスタマイズをして、完全な自分仕様として磨き上げるにはどうにも物足りないのだ。なぜならクラッシュしにくいため、細部まで変える必要がないからだ。また、誰が座ってもその人の道具となってしまうマシンを「パーソナル」と呼んでいいものか。そんなくだらないことまで考えてしまう。


ただ時代の流れは、コンピュータを誰でも扱いやすいマシンへと進化させる。それは当然なのだが、昔のMACを知っている自分はどこか寂しく思うし、道具というより消費物となった現在のMACに、かなりの残念な気持ちがある。老いぼれの戯言と言われればそれまでだが。


私の作業場には壊れては修理を繰り返す愛機G4がいる。彼は「パソコン」の本当の意味を残してそこに鎮座している。まさに「老兵は死なず」という状態だ。長年の酷使に耐え、貫禄すら感じる。


そして私は、じゃじゃ馬MACたちと悪戦苦闘した日々を面白おかしく、後の世代に残すだろう。人間とコンピュータとの悪戦苦闘の蜜月を過ごせた私は、ある意味幸せな人間なのかもしれない。



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