Appleアカデミックユーザ会第2回ミーティング レポート
2011/09/02開催
開催会場 : | 神戸大学 情報基盤センター 分館 第一演習室 サーバ室見学会 情報基盤センター本館 |
開催時間 : | 13:00~18:00 |
参加人数 : | 20名(うち神戸大学別部署から8名) |
はじめに
Appleアカデミックユーザ会第2回ミーティングは、神戸大学の情報基盤センター分館第一演習室にて実施された。教育用端末(iMac)が51台設置されている第一演習室を利用して、前方の電子黒板(StarBoard)および中間ディスプレイ(教材提示システム)に映し出される講義資料を見ながら、セミナー形式で行われた。
事前に大学のほうで一時利用アカウントが発行され、当日は参加者全員がその一時利用アカウントを利用して、教育用端末を使用できる環境が提供された。第3章のクライアント概要についての講義や第4章のMac OS X Lionのハンズオンでは、講義を受けながら、実際に教育用端末を利用する場面もあり、特にネットブートシステムによるSnow Leopard環境からLion環境へのブートイメージ切り替えのデモの際には、ネットブートシステムのメリットを強く感じることができた。
図1 開催会場
また、講義の後にはサーバ室の見学会が実施され、講義の中で解説のあった、基幹サーバやネットワーク機器、電源自動化装置、ネットブートサーバ(Xserve)などを見学することができ、先生同士でいろいろな意見交換が行われていた。
以下、第1章から第4章に分けて、簡単に各講義の内容について、紹介する。
第1章 教育用計算機システムの概要と特長について
(神戸大学 伴好弘 准教授)
2011年に導入された今回のシステムでは様々なサービスの拡張があったが、そのなかでもとくに特徴的なものとして、
- 基幹サーバの仮想化(IAサーバ、IBM System pサーバ)
- GPFS分散共有ファイルシステムの採用
- 統合ユーザ管理システムKUMAの拡張、学術認証フェデレーションの対応
- サーバ管理・利用統計システムによるサービスの可視化
の紹介があった。
基幹サーバは、IAサーバとIBM System pサーバを採用しており、サービスを止めることができないサーバ(LDAPサーバ、メールサーバなど)にSystem
pサーバを利用している。また、仮想化技術を利用してサーバの集約を行い、これもIAサーバとpサーバにわけて統合管理がなされている。仮想化技術により、サーバのほとんどを集約し、サーバハードウェアの台数を前システムから大幅に減少させることで、管理コストを削減するだけでなく、消費電力は前システムよりも約25%削減することができている。
ファイルサーバはGPFS分散共有ファイルシステムを採用している。4台のサーバによるクラスタ構成となっており、負荷分散とサービス冗長化を実現することができた。
統合ユーザ管理システムKUMAは、LDAPサーバやメールサーバと連携して動作し、ユーザの利用サービス割り当てやアクセス制御を行っている。また、学内の人事システムや教務システムとも連携しており、神戸大学のユーザ認証基盤の要となっている。今回のシステムでは、前システムで課題となっていた問題にすべて対応するとともに、学術認証フェデレーションにも対応することができた。
サーバ管理システムでは、フリーツールであるNagiosを採用している。障害発生時には、まずパトライトが点灯し、その後ブラウザを利用して全サーバのサービス状況を確認することができるため、この簡素化したシステムにより、事務職員でも管理ができる体制を整えることができている。
利用統計システムでは、フリーツールであるCACTIを採用している。これもブラウザを利用してアクセスすることができ、日単位または時間単位にて、ユーザのログイン状況(利用者数の把握)などを確認することができる。また、このデータをレポートとして吐き出すこともできるため、学内での報告書の作成にも活躍している。
第1章での講義状況
第2章 事例紹介~全学共通科目「情報基礎」におけるICT活用~
(神戸大学 熊本悦子 准教授)
神戸大学で行われている「情報基礎」の講義は、全学共通必須科目であり、同大学の学生は教養科目として講義を受けることが義務付けられている。半期かつ隔週の講義であるため内容は実質約6単元ある。
大学に入学するまでMacを使用したことがない学生も多数いるため、はじめの講義はiMacの電源の入れ方やマウスの使い方から始まる。その他、この講義を通して、学内システム(履修登録)の使い方、Thunderbirdを用いてのメールの送受信の仕方やメール送受信の際のマナー、情報倫理などを学ぶ。
講義は100人~170人のクラスで行われる。学生約50人に対して講師が1人対応できるよう、講師は大学院生であるTAを含め、2人~4人配置している。また、1学部の受講者は約300名であり、全学を合わせると膨大な受講者数となるため、担当する講師も複数存在する。その場合、講師によって講義の内容や質が変わることを防ぐため、講義の手順書を作成し、Webテキストを活用している。また講義終了後は、小テストや課題レポート、アンケートを行うことにより、講義の質を一定化できるようにしている。また、小テストについては、利用する端末によって異なる問題が表示されるようになっており、隣の学生の解答を写すことができないようになっている。小テストは何度も受けることができるが、2回目までのテストしか成績に反映されない。また小テスト、アンケートは自動採点システムで採点、集計される仕組みとなっている。
第3章 ネットブートによる大規模な教育用端末Mac OS Xの構築と運用
(神戸大学 荻野哲男 助教授)
2011年に教育用端末の入れ替えを控え、大学では約2年前からその仕様について、検討を重ねてきた。端末の利用方式としては、
- スタンドアロン方式
- シンクライアント方式
- ネットブート方式
があるが、神戸大学のように、遠隔キャンパスがあり、管理する端末の台数が多い場合は、スタンドアロン方式はその管理が大変となり、不向きである。また、神戸大学では様々な学部や学科の授業で使われ、グラフィックデザインや数値計算にも利用されることから、端末のCPUやメモリを利用することができるネットブート方式が、最も適していると考えた。
次に、OSとして何を採用するのかを検討した。ただ、考えてみると、ユーザが利用する・利用したいのはアプリケーションであって、OSではないということに気づき、前システムで安定して稼働したということもあり、OSとしてMac OS Xを採用することに決定した。
2010年11月には、iMac150台を利用したパフォーマンステストをサーバ室にて行い、ホームディレクトリのマウント方式については、端末台数が多くなるにつれて、AFPのパフォーマンスが極端に悪くなる傾向となることがわかり、NFSを採用することとした。現在学内には、六甲台キャンパス、板宿キャンパス、深江キャンパスを合わせ1291台の教育用端末(iMac)が導入されており、それらの端末はすべて、基盤センターサーバ室のブートサーバ(Xserve)から起動して利用できる仕組みとなっている。
インストールソフトウェアとしては、数多くのソフトウェアを利用できる環境を整えており、要望のあったソフトウェアについては、高価なソフトウェア以外は、できる限り対応することにしている。たとえば、以下のようなソフトウェアを利用することができる。
- オフィスソフト Microsoft Office 2011 for Mac
- 統計ソフト SPSS、TSP、GNU R
- CADソフト VectorWorks
- プログラミング Processing.org(サイン関数のアニメーションのデモが行われた)
- 数式演算ソフト MATLAB、Maple
- アニメーションソフト FrameByFrame(iSightカメラで写真を撮り、パラパラアニメを作成するデモが行われた)
- 医療画像処理ソフト OsiriX(サンプルデータを利用してデモが行われた)
図3 教育用端末(iMac)
図4 第3章での講義状況
第4章 Mac OS X Lionの機能説明
Mac OS X Lionの新機能のうち、主な新機能についての紹介があった。
<Mac OS X Lion>
- Launchpad・・・iPadのようにディスプレイに全てのアプリケーションが表示され、1クリックでアプリケーションにアクセスができる。
- マルチタッチジェスチャー・・・トラックパッドやMagic Mouseを利用して、画面のスクロールやズームを2本指で操作し、3本指でMission Controlを表示するなど、画面を触るような感覚で操作することができる。
- Mission Control・・・すべてのアプリケーションは、フルスクリーンで利用することができる。Mission Controlを利用すれば、現在開いているウィンドウすべてが1つの画面に表示されるため、アプリケーションウィンドウの切替が今までよりもスムーズに行うことができる。
その他、ウィンドウを閉じても次に再開するとき前の画面が開く「再開」や、オートセーブ機能、書類の履歴を表示する「バージョン」、近くにいるユーザと素早くファイル共有ができる「Air Drop」などの機能が新しく追加されている。
<Mac OS X Lion Server>
- Wikiサーバ・・・今までよりもさらに使いやすくなり、簡単にページを作成することができるようになっている。Wiki上でカレンダーを利用することもでき、グループでのスケジュール管理などにも活用することができる。
- プロファイルマネージャ・・・Lionを搭載しているコンピュータと、iPadやiPhoneなどのiOSデバイスをリモートで設定・管理できる。Developer Programに登録する必要はない。
おわりに
当日は台風の中、遠方からも当会に参加する方もいた。内容に関しても参考になった、次回も参加したいという意見が多く好評であった。次回アカデミックユーザ会ミーティングは2月~3月ごろ、大阪大学で開催される。iPadをドイツ語の講義に導入している岩居教授にご講義いただく予定だ。