導入事例

空き家情報を一元管理する台帳整備

あわら市生活環境課様

少子高齢化でクローズアップされている「空き家問題」解消に向け、福井県あわら市様は空き家情報を一元管理する台帳整備に取り組まれました。福井工業大学様(福井県福井市)と連携したプロジェクト。当社もシステム導入でお手伝いさせていただきました。

IT 活用の空き家調査 「学生視点」に高い評価

きっかけは2016 年夏、当社があわら市様と福井工業大学様に空き家問題解消につながる産官学連携のプロジェクト提案を行ったことでした。当社にとっては両者とも長いお付き合いをさせていただいているお客様で、全国的な社会問題となっている空き家の利活用が前向きに進む契機になるのではと考えたのです。

「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下、特措法)が施行された2015 年5 月以前から、あわら市様では市内自治会長の協力を得て空き家調査を行っていました。しかし、市内をくまなく調査した台帳整備にまでは進んでいなかったのが実情だったといいます。

北島氏は「特措法施行を受けしっかりした台帳を整備しようと、2016 年7 月に公募型プロポーザルを行ったところ、三谷商事さんを含む複数社から応募がありました。導入実績だけでいうと他社が有利な点もあったのですが、学生世代の視点で空き家問題を捉えるという提案に『取り壊しだけではない空き家利活
用の可能性が見いだせるのでは』と、実績以上の魅力を感じました」と振り返ります。

福井工業大学様からは、まちづくりに関する研究を長年続けている下川勇准教授が参画してくださいました。「三谷商事さんからのご提案に非常に魅力を感じました。まちづくりに関して現在もさまざまな取り組みを行っていますが、空き家に焦点を当てたプロジェクトは今までなかったのです。学生にとって空き家問題はニュースやインターネット上での話で、リアルな体験が伴っているわけではありません。自分の目で建物を評価するという体験は貴重で、建築を見極める目を養うことにも通じると考えました」。研究室に在籍する学生13 人に呼び掛けたところ、9 人の学生が参加することになりました。

ご担当者様写真

あわら市
市民生活部 生活環境課 環境グループ 課長補佐
北島 英孝 氏

担当者様のコメント

契約締結から稼働開始まで約2カ月というスケジュールの中、フットワーク良く対応していただけてありがたかったです。おかげで大きなマシントラブルもな
く台帳を整備することができました。後半、現地調査が週末に掛かってしまったのですが、担当の方がわざわざ現地まで駆け付けてくれたのもうれしかったです。

既存パッケージ活用で 導入までの期間を短縮

システムは現地で調査結果を入力するためのタブレット端末と、GIS(地理情報システム)と連携しながら約600軒の空き家情報を管理する台帳整備データベースという2本柱で構成されています。使用アプリケーションは既存製品のカスタマイズで対応し、開発期間や導入コストを圧縮。あわら市様のセキュリティポリシーの関係で、現地で端末に入力したデータはインターネット経由で直接庁内には送らず、庁内にいったん持ち帰ってデータの同期を取るという運用法をとっています。

調査開始に当たっては一級建築士を講師に招き、タブレット端末の操作や事業の目的、建物の評価基準などを共有する講習会を実施。対象が約800軒と多く調査作業が後期授業期間にずれ込んでしまったものの、授業のない週末を調査日に充てることで乗り切ることができました。「後半は人員確保に苦労した場面もありましたが、調査が進むにつれ学生の作業効率が上がっていったことや、経験の豊富な学生がうまくフォローにまわってくれたことで調査を終えることができました」と下川氏は笑みをこぼします。

▲タブレット端末と連携させて、空き家情報を管理する台帳整備データベースを作成

データベース活用では 防災・防犯連携も視野に

システム設計の面でご協力くださった同市生活環境課環境グループの齊藤大樹氏からは、タブレット端末側のアプリケーションについてのご感想もいただきました。「今後の利活用につなげるべく、調査結果を入力する画面に学生さんの意見や感想を記入できる備考欄を設けていただきました。我々のような行政側の立場だと空き家を住宅として活用することに目が行きがちですが、実際には店舗や地域のコミュニティスペースとして生かした事例も少なくありません。今回の調査でも、あわら温泉近くの空き家について『観光案内所や土産物店に転用しては』などの意見がありました」。 

今後はいよいよ、整備した台帳を活用する段階へと入っていきます。あわら市様ではすでに、空き家売買や賃貸を希望する所有者からの申請を基にした『空き家情報バンク』を市ホームページで提供しており、同バンク普及促進を後押しする基礎情報として今回構築した台帳の活用を予定しているとのことです。

北島氏は「今回のデータベース構築で非常に精度の高い空き家情報のデータができました。ゆくゆくは消防や警察とも連携して、防災や防犯方面での活用も考えていきたいですね」というプランも話してくださいました。

お客様よりひとこと

現代日本の社会問題である空き家を地域単位で調査し、活用の視点から実際に検討できたことは、学生たちにとって有意義な機会となりました。この機会を各自の研究に応用していってくれることを期待しています。

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  • 福井工業大学
    工学部
    建築土木工学科 准教授
    下川 勇 氏

お客様よりひとこと

タブレット端末側のアプリにある備考欄は私たちにとって発見の種になりますね。記入された意見や感想を基に、実際に現地に行ってみて「なるほど」と思わされることもありました。

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  • あわら市
    市民生活部 生活環境課
    環境グループ 主事
    齊藤 大樹 氏

あわら市役所

担当営業マンよりひとこと

「空き家調査×産官学連携×空き家システム」という初めてのプロジェクトで、開始当初は不安でしたが、あわら市役所の職員様や下川先生、学生様に温かく助けてもらい、プロジェクトを楽しむことができました!

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  • 営業担当
    情報システム事業部
    公共システム営業部
    野坂 優介