導入事例

電子カルテ刷新を機にインフラ再構築

医療法人社団浅ノ川 浅ノ川総合病院様

金沢市にある浅ノ川総合病院様は、19 の診療科、18 の診療センターなどを持つ北陸最大の民間病院グループ、浅ノ川病院グループの基幹病院。がんの早期発見につながる「PET-CT」や、切らずに病変を治療する「ノバリス」「ガンマナイフ」などの先進医療で県外にもその名が知られています。当社では2014 年秋、病院情報システムの刷新に伴う院内ネットワーク環境の再構築にあたり、最新鋭の技術を盛り込んだ有線・無線LAN 機器を納入させていただきました。

電子カルテ刷新を機にインフラ再構築、数百台のクライアントPC 入れ替えも

 浅ノ川総合病院様と当社とのお付き合いのきっかけは、同病院のグループ医療機関である心臓血管センター金沢循環器病院様(金沢市田中町)のネットワーク機器再構築プロジェクトでした。2012 年1月に始まった同プロジェクトで、当社は館内ネットワークの要である「コアスイッチ」や統合監視ツールにヒューレット・パッカード(以下、HP)製の製品群を提案。導入・運用双方を含めたコストやサポート体制が評価され採用に結び付いた経緯があります。
 これを契機として、3 年ほど前からグループ内のシステム担当者が集まる勉強会に参画する機会を得ることができ、浅ノ川総合病院様の館内ネットワークを管理するシステム管理室の髙戸 聡氏と知り合うに至りました。
 浅ノ川総合病院様に最初に納品したのは、医療現場におけるインシデント(=ヒヤリ・ハット)のレポート作成を支援するアプリケーションソフトでした。サポートなどで訪問回数が多くなる中で、電子カルテや館内ネットワークなど、現場を支える基幹システムを再検討する時期に差し掛かっていると明かされました。
  このたびの館内ネットワーク再構築は、2007 年に導入したネットワーク機器の老朽化が起点になっています。同時期に導入した電子カルテシステムを刷新するタイミングに合わせ、かねて課題となっていたネットワーク環境も根本的に見直そうということになりました。髙戸氏は「2014 年春のWindows XP のサポート打ち切りも重なったため、有線・無線LAN、電子カルテを含む病院情報システム、さらには数百台のクライアントPC をも刷新するという大がかりなプロジェクトになりました」と話します。
 病院の電子カルテは、診察や検査、投薬、手術の経過など患者さんに関するデータを一元管理するシステムです。カルテを参照する場が診察室、検査室、病棟など多岐にわたるため、どこにおいてもスムーズにデータを確認できる堅牢なシステムを作ることが求められます。しかし当時運用していた館内ネットワークでは、特に無線LAN 周りでのトラブルが多かったと聞きます。
「病棟では、カルテを参照するためのPC をワゴンに乗せて医師や看護師が病室を巡回します。しかし当時の無線LAN は、場所によって電波の谷間があったり、転送速度の低下や電波の切断が日常的に起きていました」と髙戸氏は振り返ります。

ご担当者様写真

浅ノ川総合病院
事務長
谷 寛憲 氏

担当者様のコメント

石川県内の大学でコンピュータ室長を務めたこともあり、これまでにさまざまなソフトウェア・ハードウェアベンダーさんなどとやりとりしてきました。三谷商事さんは初めてお会いしたときから誠実な印象で、今回のプロジェクトでもその誠実さが一つひとつの動きに表れていたように感じました。

シングルチャンネル構成の無線LAN に仮想化技術も活用し転送速度向上を図る

 そこで当社は、すでに福井県や長野県の病院で導入実績があったメルー・ネットワークス(以下メルー)製の無線LAN システムを提案しました。コントローラにより電波の集中制御を行うメルー製のシステムは、複数のアクセスポイント(以下、AP)間を同一チャンネル(シングルチャンネル)で移動できるという特徴を持っています。
 浅ノ川総合病院様のご要望で、透析センターや化学療法センターなど病棟以外の場所でも無線LAN を使える環境を構築。設置にあたって大阪から測定器を持ち込み館内の電界強度を計測したところ、ほぼ当初の設計通りのAP 配置でまかなうことができました。違うチャンネルのAP 間を行き来することで発生する転送速度低下や、電波の切断といったトラブルが解消され、現場の作業効率が格段に向上しました。
 今回の機器刷新では、「コアスイッチ」「フロアスイッチ」「ミドルスイッチ」など、館内ネットワークの要となる機器を心臓血管センター金沢循環器病院様と同じHP 製品に入れ替えました。特に厳格な運用が求められるコアスイッチについては、従来のアクティブ・スタンバイ構成による冗長化から、HP 独自のネットワーク仮想技術『HP IRF(Intelligent Resilent Framework)』による3 台のスタック構成に変更。3 台の物理コアスイッチを仮想的に1つのスイッチとして束ねる同技術は、仮に1台に障害が起きても、外部からそれを認識することなく通常通り通信できる特徴をもっています。障害時のダウンタイムが極めて短くなるというわけです。
 また、複数のLAN ポートを1 つのチャンネルとして扱う『LACP(Link Aggregation Control Protocol )』を採用したことも速度向上に貢献しています。通常使用時はアクティブ・スタンバイ双方をあたかも1 本のネットワークとして運用するため、理論上は従来の2 倍の速度で各サーバ−コアスイッチ−フロアスイッチ間を転送できるようになりました。その効果を最大限に生かせるよう、エッジスイッチを1Gbps ベースのものに切り替えてもいます。
 館内の有線LAN に接続しているのは、コアスイッチ= 3 台・サーバスイッチ= 6 台・フロアスイッチ= 38台・ミドルスイッチ= 20 台・エッジスイッチ= 200 台。素早い障害検知を可能にするため、心臓血管センター金沢循環器病院様と同じ統合監視ツール『IMC(IntelligentManagement Center』も導入し、いち早い保守対応が取れる体制にしました。

▲従来の無線LAN環境の課題だった「AP間の電波の切断」を克服したメルーの技術。通信安定性が向上したことで、病室までワゴンを持ち込んでも電子カルテの参照・入力に不便をきたすことがなくなりました。

ネットワークの安定性向上により 現場の作業効率が大幅にアップ

 今回のプロジェクトで大きなハードルとなったのが、テスト用として使える予備の有線ネットワークが館内に巡っていないことでした。予備のネットワークがあれば予め新規の機器を持ち込みテストを重ねた上で最小限の時間で切り替えができます。しかし、今回のプロジェクトでは通常業務の間隙を縫って機器の交換や LAN ケーブルの差し替えを行う必要がありました。しかも病院という施設の特性上、館内ネットワークを原則的に 24 時間止めるわけにはいきません。
 そこで機器交換の作業に先立ち、浅ノ川総合病院様と当社の間で検討を重ね、作業時間帯とネットワーク復帰の優先順位を決めました。髙戸氏は 2014 年 11 月に行われた大工事をこう振り返ります。「館内のトラフィックが落ち着くのは深夜帯なので、作業を深夜に行うことがまず決まりました。その上で、深夜でも稼働する時間外の救急外来、各部門のシステムが集中する本館1階・2 階、最後に病棟及び外来部門という順位でネットワークが復帰するようスケジュールを組みました」
スピーディに作業が進むよう、入れ替え当日は可能な限りの“仕込み”を済ませた上で機器類を搬入。ネットワークケーブルには、折れやすい光ファイバーケーブルも数多くあり、万が一に備えて工事業者も立ち会って慎重に作業が進められました。
 導入から約 8 カ月が経過し、現場では劇的な変化が見られるようになったと事務長の谷 寛憲氏。「これまでは、看護師が病棟のスタッフステーションで電子カルテにデータ入力するのが日常の風景でした。しかし、このたびの無線 LAN の入れ替えにより、患者さんのベッド脇で直接データ入力するのが当たり前になりました。館内ネットワーク全体の信頼性が向上したことの証といえるのではないでしょうか」と評価をくださいました。

▲館内ネットワークの心臓部となるコアスイッチと、約100台の無線LAN APを制御するコントローラをラックに収容。

高度化する医療・福祉のネットワーク次世代見据えたプロジェクトに

急速に進行する高齢化社会と年を追うごとに増大する社会保障費を背景に、国は地域の基幹医療機関やクリニック(=かかりつけ医)、介護サービス、在宅医療などを連携する「地域包括ケアシステム」の施策を進めています。浅ノ川総合病院様を核とする「浅ノ川病院グループ」様では、がんや糖尿病、脳卒中、急性心筋梗塞、精神疾患など国が進める「5 疾病5 事業」の方針のもと、すでに各疾病を専門領域とする病院で構成されており、地域に根ざした医療を進めていく方針だといいます。
 患者さん一人ひとりに細やかなケアを施すためには、「地域包括ケアシステム」にかかる、拠点間でのスムーズな医療情報のやりとりが欠かせません。今後、高精細度の静止画や動画などがごく当たり前に使われる時代となり、拠点間のコンピュータネットワーク上を流れるデータ量の増大も予想されます。また、2018 年からはカルテやレセプト(=診療報酬明細)などの医療情報と「医療等ID」との連動も予定されています。医療分野におけるコンピュータネットワークの重要性がますます高まっていく中で、今回の機器刷新はその基礎を構築する大プロジェクトとなったといえるでしょう。

お客様よりひとこと

今回のシステム構築にあたり、複数の業者様に問合せをいたしましたが、最もレスポンスが速く、技術面、運用面、コスト面から具体的なご提案をいただいたのが三谷さんでした。様々な懸念点を三谷さんは見事に解決してくれ、さらに我々が使いやすいように配慮したシステムを構築してくれました。

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  • 浅ノ川総合病院
    システム管理室主任
    髙戸 聡 氏

医療法人社団浅ノ川  浅ノ川総合病院

  • 所在地
    石川県金沢市小坂町中83
  • TEL
    076 − 252 − 2101(代)
  • FAX
    076 − 252 − 2102
  • URL
    http://www.asanogawa-gh.or.jp/
  • 設立
    1951年(昭和26 年)
  • 診療科目
    内科、腎臓内科、精神科、神経内科、
    循環器内科、小児科、外科、
    整形外科、形成外科、脳神経外科、
    心臓血管外科、皮膚科、泌尿器科、
    産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、
    放射線科、麻酔科、リハビリテーション科
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営業担当マンよりひとこと

当プロジェクトでは病院スタッフ様の明るさに癒され、ご協力にはたいへん感謝しております。今後も「システムベンダー機能」と「商社機能」にて、貴院IT の土台に徹したいと願っております。

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  • 情報システム事業部
    福井支店
    柴田 利明

技術担当

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  • 情報システム事業部
    金沢営業所
    齋藤 尚弘

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